「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の感想 - 映画の都は静かに惨劇を待っていた

クエンティン・タランティーノ監督が、ヒトラーたちをパリで殺した『イングロリアス・バスターズ』に続いて世界史をひっくりかえしてくれました。 全体として緩さが心地よい映画でした。この映画の張りつめたところのなさは一つには、タランティーノ特有の出演者が延々とおしゃべりを続けるシーンを映画の最初に持ってきたことによるでしょう。イタリア製西部劇への出演を誘う映画プロデューサー(アル・パチーノ)との会話を通じて主人公リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)の業界での立ち位置がわかった後、「映画の都」というよりは「テレビ映画の都」という感じのハリウッドでテレビ映画撮影にまつわる様々なエピソードがつづられていきます。 それともう一つこの映画に心地よい緩さをもたらしているのは街にたむろするヒッピーの女の子たちののびやかなたたずまいでしょう。スタントマンですが本業の仕事はなく、ほとんど親友のリックの付け人兼運転手になっているクリフ・ブース(ブラッド・ピット)が彼女たちの一人にみとれるのです。彼女たちの伸びた足は、自分の出演作を見に入った映画館で夢見るようにスクリーンを見つめるシャロン・テート(マーゴット・ロビー)がだらしなく前の座席に投げ出した足と共に自由や平和を体現しているようです。 でも、世界はそれほど甘くはない。クリフは一人のヒッピーの女の子を彼女が生活する牧場に車で送っていきますが、そこはクリフが映画撮影で何度も来ていた牧場で、クリフは牧場主に挨拶に行きますが、そのためにダコタ・ファニング演じる一人のヒッピーの執拗な抵抗を押し切らなければなりませんでした。牧場はチャールズ・マンソン率いるコミュニティーに変貌していて、一人ひとりはいい人そうなヒッピーの若者たちもそこでたむろしていると危険で威圧的で排他的な雰囲気を漂わせます。そしてリックの屋敷でのマンソン・ファミリーとリック、クリフとの死闘というクライマックスが準備されます。

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#映画#ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド#感想

パピチェー  2019-10-17