「記憶にございません!」の感想 - 私にとっては、三谷幸喜作品の中では最高峰の映画です。

私にとっては、三谷幸喜作品の中では最高峰の映画です。オールスターキャストであることも勿論ですが。予告や前情報では予想がつかなかった展開が多々あり、その怒涛の展開に驚かされることばかりでした。

さらに、まるでゲームの隠れキャラのように「え?これ誰?うっそー!」と次から次へと出てくる意外なキャラクター達。 特に、恐らく映画初出演であろう有働由美子アナのすごい擬態ぶりに驚愕し、ローリー寺西さんの化けっぷりに、彼の若い頃を知っている身としてはその強烈なイメージの乖離に心臓がバクバクしてしまうほどの、しかし、静かな興奮を覚えました。 キャストさんたちが、全面的に三谷監督とその脚本、そしてスタッフを信頼して”まとまっている感”が素晴らしい!と思ったのでした。 総理が記憶を無くす前と、無くしてからのギャップが凄いです。 その描き方は、中井貴一さんが演じる黒田総理の表情や声、喋り方、態度に表れているのは勿論のことですが。 そして、その演じ分け方、誰に石を投げられても文句は言えないなぁ、と言うほど極悪非道の彼と、石をぶつけられてから豹変した彼のピュアさの対比が素晴らしいのですが。 周囲のキャラクター達がその変化に対する反応が激烈で、その演出によって数倍のインパクトを醸しているのが伝わってきました。 ピュアな黒田総理の一挙手一投足に全員がフリーズしたり、一瞬”ざわ!”っとどよめいたり。 そうした表現によって、黒田が以下に酷い男だったかがわかり、それによって黒田自身が心臓をぐさぐさ針で突き刺されるように懊悩していく様子がよどみなく描かれており、見ている側はいろんな視点からこの作品に引き込まれていったのです。 もともと黒田は酷い男でした。 しかし、彼が記憶を失ったことで再生していく、彼自身と、政治家・黒田啓介と、黒田の家族たち…後半はその反応がまるで”瑞々しい”とも言いたくなるようなタッチで描かれていくのです。 三谷さんの映画はどこかに必ず結構なレベルの毒が含まれていると考えていましたが。 この映画は一人の男がまき散らしていた毒を、一つの石がリセットをかけるきっかけになり、その毒によりどん底にあった彼の人生と、家族の暮らしと、そして日本の政治が変えられていく。 見終わって、こんなに清々しくなる三谷映画は初めてだったなぁ、と思ったのでした。 是非大きなスクリーンで見てくすっとわははと笑っていただきたいですね。お勧めです。

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#映画#記憶にございません!#感想

じゃぴろ  2019-10-11